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南の欠け

張欠考

建物の外形が南側で凹んでいる状態です。太陽がもっとも高く昇る方位だけに、古典でも独自の記述が残されています。

北東 南東 南西 西 北西 鬼門 裏鬼門

古典ではこう言われます

建物を真上から見て長方形の輪郭を思い描いたとき、南面のように一部が凹んでいる部分を、家相では「欠け」と呼びます。反対に外へ出っ張っている部分は「張り」と呼ばれ、江戸期の家相書には、この張りと欠けをあわせて建物の外形全体の吉凶を見る記述が残されています。

欠けと呼ばれる範囲には目安があり、辺の長さのおおよそ3分の1程度までの凹みを欠けとし、それを超える大きな凹みは間取りの一部が失われたものとして別に扱われる、という説明がされることが多いようです。凹みの深さや位置によって、南面ならではの見立ての細かさも変わるとされています。

南は八卦でいう離にあたり、火や夏、一日のうちでもっとも太陽が高く昇る正午の方位とされます。太陽そのものを象徴する方位ともいわれ、家相では、欠けそのものの吉凶は方位によって意味合いが異なるとされており、南の欠けについても、ほかの方位とは異なる独自の記述が古典には見られます。

家相書の記述は流派によって幅があり、欠けの大きさや深さ、形、ほかの場所との組み合わせによって見立てが変わるとされています。南の欠けだけを取り出して、一律に良し悪しを判断できるものではないようです。

なぜそう言われるのか

南に欠けがあることが、なぜ古くから注意されてきたのか。その理由は、方位の象徴的な位置づけと、家の使われ方の両方から説明されることが多いようです。

伝統的な木造家屋では、南面は一日を通してもっとも日差しが入り、家の中でも中心的な居室が置かれる方位でした。ここが凹んでいると、本来もっとも明るく風通しのよいはずの場所が狭くなり、居室全体の日当たりが均等に行き渡りにくくなる、と考えられてきたようです。

また、南は家の「顔」にあたる方位ともされ、庭や縁側を通して外の気配と接する場所でもありました。外形がここで凹んでいると、庭との連続性が損なわれたり、軒下にできる日陰の位置が偏ったりすることが、古くから気にかけられてきた点のひとつだったと考えられています。

南中にあたる正午の太陽をどう建物に取り込むかは、当時の暮らしにとっても大きな関心事だったようです。日の巡りがもっとも高くなる方位に凹みがあれば、庭木の影の落ち方や縁側の使い勝手にも偏りが出やすく、日照の恩恵を受けにくい部屋が生まれることも、家相の記述に反映されたと見られます。

つまり南の欠けをめぐる記述は、方位そのものの吉凶というよりも、当時の住まいでもっとも活用されていた場所が狭くなることへの注意だった、という読み方ができます。

実際の間取りでよくある形

南に欠けが生じる間取りには、いくつか典型的な形があります。これらは狙って作られた欠けというより、南面の採光を優先した結果として現れる形だといえます。

上が北
上が北。朱の面が建物の欠けにあたるあたりです。外形の凹みが建物のどの区画にかかるかで見ます。

もっとも多いのは、1階のリビングを敷地の奥へ引っ込め、その手前を庭やウッドデッキとして広く取る設計です。建物の外形としては南面の中央が凹んだ形になります。南面にバルコニーを大きく張り出す代わりに、直下の掃き出し窓まわりを後退させ、1階と2階で外形の線がずれる場合も同様の形になります。

南入りの玄関でポーチを深く取り、庇の下を凹ませて設けるケースも見られます。日射を遮りながら開放感を出す工夫として選ばれることが多く、いずれも意匠上の判断として選ばれた形です。南西の欠けで扱う南西の欠けと同時に生じる間取りもよくあります。

現代の住まいでの読み替え

現代の住宅は断熱・遮熱の水準が当時とは大きく異なり、南の日差しをどう取り込むかは設計の主要なテーマのひとつになっています。

南に欠けがあると、家の中でもっとも日照時間の長い面積が減るため、リビングや主寝室の採光計画には影響が出やすいとされます。特に冬場は南面の日差しが暖房の効きを左右するため、欠けの分だけ窓の取れる幅が狭くなる点は、間取り検討の段階で意識されることがあります。庭やデッキとの位置関係も、この凹みの形によって変わってきます。隣家との距離が近い敷地では、欠けの奥に光が届きにくくなることもあります。

一方で、欠けの部分を庭やデッキとして活用すれば、そこから風の通り道が生まれ、夏場の通風にはむしろ有利に働く場合もあります。古典が触れてきた「日当たりの偏り」は、現代では採光計画と通風計画のどちらを優先するかという設計上の判断に置き換えて読むことができます。庭木の配置や窓の高さを工夫することで、欠けの弱点を補う設計も見られます。

お手元の間取り図では、どうでしょうか

玄関の方角と、水回り・建物の外形をあわせて拝見します

間取りの写真1枚で分かります

同じ南でも変わること

同じ南の欠けでも、隣接する方位との関係で古典の記述は変わるとされます。南東寄りか南西寄りか、凹みの向きによって、あわせて読まれる記述も変わってくるようです。

鬼門 裏鬼門 宅の中心
上が北。家相で「三所」と呼ばれるのは、鬼門・裏鬼門・宅の中心の三つ。診断でも、間取り図をこの九つの区画に分けて見ています。

たとえば欠けが南西寄りにまで及ぶ場合は、南西の欠けで扱う裏鬼門の記述とあわせて見られることがあります。逆に欠けが南東寄りであれば、採光や通風の面から好まれるとされてきた玄関の向き(南東の玄関)との兼ね合いで語られることもあるようです。

また、南に玄関を構える間取り(南の玄関)では、玄関まわりの張り出しと外形の欠けが同時に生じることもあり、開口部の位置と外形の凹みは古典のなかでは別の項目として扱われながらも、実際の間取りでは重なって現れることが少なくありません。

古くから採られてきた対処

古くは、日照のもっとも強い南の欠けを物置にせず、日差しを遮らない明るい状態に保つことが心がけられてきました。南の欠けについても、庭や外構として使い、風通しと日当たりを損なわないようにする、という扱いが基本とされています。

マドラバの無料診断でも、欠けは方位にかかわらず8方位すべてを指摘の対象としています。ただし判定は「方位によって意味合いが異なるとされます」という伝聞形の説明にとどまり、南だからといって特別な断定はしていません。

あなたの間取りで見るべき点は

玄関・水回り・建物の外形を、古典に照らして拝見します

間取りの写真1枚で分かります

典拠



江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』ほか)に見られる建物外形の「張り・欠け」論

家相の通説で巽(南東)の玄関を吉とする説(江戸期の家相書群に見られる)。採光・通風の面からの説明が付されることが多い

易の八卦を方位に当てる考え方(後天定位盤)。北=坎、北東=艮、東=震、南東=巽、南=離、南西=坤、西=兌、北西=乾

文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。

よくあるご質問

南に欠けがある家は避けたほうがよいですか。

南の欠けをめぐる家相書の記述には流派による幅があり、一律には言えないとされています。南の欠けについても、方位によって意味合いが異なるという伝聞形の記述にとどまり、断定的に避けるべきとはされていません。庭や外構との組み合わせ、間取り全体のバランスをあわせて見られることが多いようです。

南側にバルコニーを大きく作ると欠けになりますか。

南面の外形そのものが凹んでいるかどうかで判断されます。バルコニーの位置や形、下階との外形の重なり方によって、欠けとして数えられる場合とそうでない場合があるとされ、平面図の形だけで一律に判断できるものではないようです。実際の判定では建物全体の輪郭を見て判断されます。

欠けはどれくらいの大きさから数えられますか。

辺の長さのおおよそ3分の1程度までの凹みを欠けと呼ぶ、という説明がされることが多いようです。それを超える大きな凹みは、間取りの一部が失われたものとして、また別の項目として扱われるとされています。厳密な数値までは定められていないようです。おおよその目安として理解されています。

南の欠けと南向きの玄関は関係がありますか。

欠けは建物全体の外形について、玄関は開口部の位置について見るもので、古典では別の項目として扱われます。ただし同じ間取りに両方が重なることもあり、南向きの玄関とあわせて記述されることもあるようです。両方をあわせて見る記述も残されているとされます。

案内役のイラスト

広げる。合わせる。照らす。

間取り図を広げ、方位を合わせ、古典に照らす。
あなたの一枚を、順に拝見します。

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