部屋別の家相
家族が集まるリビングは、続き間だった時代の座敷と、現代のLDKとでは、部屋のあり方そのものが違います。採光と風通しという実利の面から重んじられてきたことと、家の中心にリビングが来る間取りの扱いを見ていきます。
一
今のような独立した「リビング」という部屋は、伝統的な日本家屋には存在しませんでした。かつての住まいは、襖で仕切られた座敷が続く「続き間」の造りが一般的で、来客の応接も家族の団らんも、用途に応じて襖を開け閉めしながら同じ空間で行われていました。一室が食事の場にも寝る場にもなる、用途を固定しない使われ方だったといえます。
家相書が対象としてきたのは、竈・厠・井戸という三備と、門戸にあたる玄関、そして宅の中心です。座敷そのものを名指しして方位を避けるべきだと明記した記述は、ここで示す典拠には含まれていません。
現代のLDK(リビング・ダイニング・キッチン)は、この続き間の造りとは成り立ちの異なる、洋風の間取りから広まった部屋の使い方です。椅子とテーブルで暮らす生活様式が広まったことで、畳に座る座敷とは部屋の使われ方そのものが変わってきました。この記事では、続き間だった時代との違いを踏まえたうえで、採光と風通しという実利の面と、家の中心にリビングが来る間取りの扱いを見ていきます。
二
続き間の造りでは、南面に座敷を並べて日当たりを確保し、襖を開け放てば風が抜けるように設計されることが多くありました。採光と通風は、部屋の名前や用途を問わず、住まい全体で重んじられてきた考え方だったといえます。
易の八卦を方位に当てる後天定位盤では、巽(南東)に採光・通風のよさが結びつけられ、南東の玄関を吉とする通説も、この考え方から説明されることがあります。家族が長く過ごす座敷を、日当たりのよい南面に据える発想も、同じ考え方の延長にあると考えられます。
座敷は来客をもてなす場でもあったため、明るく風通しのよい印象を保つことは、暮らしやすさだけでなく、家の格式を示す面でも重んじられてきたと考えられます。玄関から座敷までの動線、庭に面した縁側の造りなど、採光と通風を確保する工夫は、家全体の設計に及んでいました。
現代のLDKが家の中心に近い位置に据えられる間取りは、続き間の座敷とは違う成り立ちを持っています。玄関から近く、各居室への動線が集まりやすいという、動線計画上の理由から中心付近に配置されることが多く、家相の三所という考え方とは別の論理で決まっている場合が少なくありません。
宅の中心を重んじる考え方は、竈・厠・井戸という三備を対象にしたものであり、座敷やリビングのような居室は、この対象には含まれていません。同じ「中心」という位置でも、何が置かれているかによって家相での扱いが変わる、という点はあらかじめ知っておくとよいとされます。
三
間取り図でリビングの家相を見るときは、まず日当たりと風の通り道を確認します。南面に大きな窓が取れているか、対角線上に窓や開口部があって風が抜けるかどうかは、続き間の時代から重んじられてきた採光・通風の考え方に通じます。
次に、宅の中心——建物をおおむね九つの区画に分けたときの真ん中——にリビングが重なっているかどうかも見ます。リビングは三備のような設備ではないため、中心にあること自体を避けるべきとする記述は、ここで示す典拠には見当たりません。ただし、動線が集中する場所という点では、階段と同じような見方が当てはまる場合もあります。
吹き抜けや大きな窓を伴うリビングでは、開口部の位置と方位のかけ合わせで、実際の採光・通風の効果が変わってきます。図面上の方位だけでなく、周囲の建物による日陰の有無もあわせて確認しておくと、実態に近い見立てになります。
対角線上に開口部があるかどうかも確認しておきたい点です。窓が一方向にしかない部屋では風の抜け道ができにくく、対角に窓や欄間があると、続き間の座敷のように空気が通り抜けやすくなります。
四
現代の住宅は、複層ガラスや高断熱の窓が普及し、南面でなくても一定の採光と保温を確保しやすくなりました。それでも、リビングで長く過ごす時間の質という点では、自然光の入り方や風の通りが暮らしの快適さに直結する部分は残っています。
LDKが家の中心付近に据えられる間取りは、いまや珍しくありません。玄関・各居室・水回りへの動線を集約できるという利点があり、家族の顔を見る機会を増やす狙いから選ばれることも多い設計です。
吹き抜けと組み合わせたリビングでは、上下階の温度差が伝わりやすいという課題も出てきます。断熱性能の高い建具や、シーリングファンによる空気循環は、続き間の時代に襖の開け閉めで通風を調整していたことと、目的の点で通じるところがあります。
共働き世帯が増えたことで、リビングは家族が顔を合わせる時間の短くなった住まいの中で、団らんの機能を集約する場所としての役割も強まっています。窓の配置や照明計画によって、限られた時間でも過ごしやすい部屋にする工夫が重ねられるようになりました。
五
「リビングが家の中心にあれば家相的に良くない」という言い切りは、ここで示す典拠には見当たりません。リビングは三備のような設備ではなく、中心にあること自体を避けるべきとする記述は確認できないというのが正確なところです。
「昔ながらの続き間の造りが家相的に正しい」という受け止め方も、行き過ぎた単純化です。続き間は当時の暮らし方から生まれた造りであり、現代のLDKが劣っているという意味の記述は、ここで示す典拠には見当たりません。
「採光さえよければ方位は関係ない」という理解も粗い見方です。採光と通風は続き間の時代から重んじられてきた実利ですが、玄関や水回りの配置とあわせて家全体の均衡を見るのが、家相のもともとの考え方だとされています。リビングだけを切り離して見るのではなく、家全体の中での位置づけを踏まえることが大切だとされます。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、玄関と水回り(浴室・トイレ・キッチン)が鬼門・裏鬼門にあたるか、建物の外形に欠けがあるか、の3点を拝見しています。リビングの位置や採光・通風は、この3点のいずれにも含まれておらず、無料の見立てでは扱っていません。リビングが宅の中心にあたるかどうかの見立ては、完全版レポートで扱う範囲になります。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
易の八卦を方位に当てる考え方(後天定位盤)。北=坎、北東=艮、東=震、南東=巽、南=離、南西=坤、西=兌、北西=乾
家相の通説で巽(南東)の玄関を吉とする説(江戸期の家相書群に見られる)。採光・通風の面からの説明が付されることが多い。
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
無料の見立てでは、リビングの位置は読み取っておらず、宅の中心の判定自体が完全版レポートの範囲になっています。マドラバの無料診断が拝見しているのは、玄関の方位、水回りの方位、建物外形の欠けという3点に限られます。リビングとの位置関係を含めた見立ては、間取り図から割り出す必要があります。
巽(南東)の玄関を吉とする通説は、採光・通風のよさから説明されることが多く、南面を居室に充てる続き間の造りも同じ考え方に通じます。ただしリビングそのものの方位を避けるべきとする記述は、ここで示す典拠には見当たりません。方位よりも開口部の取り方が実際の採光を左右します。
続き間は当時の暮らし方や建具の技術から生まれた造りであり、現代のLDKが家相的に劣るという記述は、ここで示す典拠には見当たりません。採光・通風という重んじられてきた考え方は、続き間でもLDKでも共通して当てはめて考えることができるとされています。
リビングそのものの方位を避けるべきとする記述はなく、階段の位置とあわせて見る視点が中心になります。階段が家の中心にあるかどうかの考え方については、階段の家相の記事であわせて扱っています。断熱・防音の工夫とあわせて検討するとよいとされています。