住まいの形態別
すでに建っている家を選ぶ場面です。図面が手に入るかどうかで、家相の見立て方も変わってきます。内見で確認できることと、複数の候補を比較するときの見方を整理します。
一
中古住宅を買う場面は、家相の観点から見ると新築とは立場が異なります。新築の間取りは施主がこれから決めるものですが、中古住宅はすでに設計と施工が終わった建物を、そのまま受け取るか見送るかという選択になります。
家相書がもともと想定していたのは、これから家を構える人への指南でした。しかし現代の住まい選びでは、大半の人がすでに建っている物件の中から選ぶことになります。中古住宅の家相は、この「選ぶ」という場面に、古典の記述をどう当てはめるかという話になります。
図面が手に入るかどうかで、見立ての精度は大きく変わります。不動産会社から間取り図の提供を受けられる物件であれば、新築の検討時と同じように、玄関の位置や水回りの配置、建物の外形を確認できます。図面が無い、あるいは古い物件で紛失している場合は、内見時に自分の目で確認する範囲に限られます。
複数の候補を同時に比較できるのも、中古住宅選びならではの状況です。新築の設計段階では基本的に1つの案を詰めていきますが、中古では並行して検討している物件がいくつかあることが多く、家相の見立ても候補どうしを並べて相対的に見ることになります。
二
家相書が広く読まれ、大工の手引きとして用いられたとされるのは江戸期から明治期にかけてのことです。この時代の家相書は、これから普請する家——つまり新たに建てる家——を前提に書かれていました。土地を定め、方位を測り、間取りを決めていく過程の指南として、鬼門や水回りの配置についての記述が積み重ねられてきたわけです。
中古の建物を買うという発想そのものが、当時の家相書が想定していた場面とは異なります。当時の住宅は代替わりのたびに建て替えられることが多く、今のように仲介業者を介して中古物件を選ぶという市場は、現代ほどの規模では存在していませんでした。
それでも、家相の記述が「これから建てる家」だけでなく「すでにある家」にも当てはめられてきたのは、家相がそもそも建物の配置と方位の関係を見るものだからです。建てた時期がいつであっても、玄関の位置や水回りの配置、建物の外形という見るべき対象そのものは変わりません。新築時に固まった間取りは、中古として流通する段階でも基本的にはそのまま引き継がれます。
つまり中古住宅の家相は、新築時に一度だけ検討されたはずの配置を、買い手の立場から改めて確認し直す作業だといえます。売り主や施工した工務店がどこまで方位を意識していたかは物件ごとに違い、まったく意識されていない場合も少なくありません。
三
中古住宅の見立ては、図面が手に入るかどうかで進め方が変わります。
図面が手に入る場合は、新築の検討と同じ手順で確認できます。間取り図に方位を書き込み、玄関の位置、浴室・トイレ・キッチンの位置、建物全体の外形を順に見ていきます。不動産会社が方位付きの図面を用意していないことも多いため、その場合は住所から方位を割り出す作業が別途必要になります。
図面が手に入らない場合は、内見の場で確認できる範囲に限られます。玄関ドアを背にして方位磁石を当てれば、玄関の向きはその場で分かります。水回りは各室を実際に回って位置を把握し、敷地に対する建物の輪郭は、外から一周して凹凸を目で確かめます。写真を撮っておくと、帰ってから方位と照らし合わせやすくなります。
複数の候補を比較するときは、同じ観点を全ての候補にそろえて当てはめることが実務上の要点です。ある物件は玄関だけ、別の物件は水回りだけを見て比べると、判断の軸がそろわなくなります。玄関・水回り・外形の3点を、候補ごとに同じ順番で確認しておくと、あとで並べたときに比較しやすくなります。
四
中古住宅では、新築時の設計がそのまま残っているとは限りません。増築やリフォームによって、当初の間取りから変わっている物件も珍しくありません。
増築で建物の外形が変わっていれば、家相で見る欠けの位置も新築時とは違ってきます。リフォームで水回りの位置が動いていれば、当初の設計時に意識されていた配置も意味を持たなくなります。中古住宅を見るときは、いま目の前にある状態を見る必要があり、設計時の図面が残っていても、現況とは異なっている可能性を踏まえておく必要があります。
登記簿や重要事項説明書には増築の履歴が記載されることがありますが、家相の観点でどう変わったかまでは書かれていません。内見時に、増築部分がひと目で分かる場合はその位置を確認し、分からない場合は仲介の担当者に増改築の有無を尋ねておくと、見立ての前提がそろいます。
築年数が古い物件ほど、当初の設計と現況の差が大きくなりやすい傾向があります。何度かの改修を経た住宅では、家相を新築同様に一度で見立てるのではなく、現況を基準に見る姿勢が実務としては現実的です。
五
中古住宅の家相について、いくつか誤解されやすい点があります。
まず、登記簿や重要事項説明書に家相の良し悪しが記載されているという誤解です。これらの書類は法的な権利関係や物件の状態を示すものであり、家相は含まれません。家相を確認したい場合は、間取り図をもとに自分で、あるいは診断サービスなどを使って見立てる必要があります。
次に、不動産会社や仲介の担当者が家相を保証しているという誤解です。仲介業者の説明は法令に基づく重要事項の説明が中心であり、家相についての言及は業務の範囲外です。
また、「中古だから家相が悪い」「新築でなければ手の施しようがない」という、方向の異なる二つの決めつけも見られます。取得の経緯そのものを吉凶の理由とする記述は、ここで示す典拠には見当たりません。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、玄関と水回りが鬼門・裏鬼門にあたるか、建物の外形に欠けがあるか、の3点を拝見しています。図面さえ手に入れば、中古住宅でも新築の検討時と同じように確認でき、複数の候補を並べて順番に試すこともできます。図面がない場合の内見での見立てや、候補どうしの詳しい比較は、完全版レポートで扱う範囲になります。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
鎌倉期『陰陽道旧記抄』の「竈、門、井、厠、者家神也」および江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』『家相大全』ほか)に見られる、門戸を鬼門・裏鬼門に忌む説
江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』ほか)に見られる建物外形の「張り・欠け」論
江戸期から明治期にかけて家相書が広く流布し、大工の手引きとして用いられたとされる出版事情
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
図面が無い場合でも、内見の際に方位磁石を使えば玄関の向きは確認できます。水回りの位置や建物の外形も、実際に歩いて目で確かめることができます。ただし図面があるときほど正確な角度は分かりにくいため、気になる点があれば写真や間取りのメモを残しておき、あとで照らし合わせる方法が実務的です。
物件によって確認できる項目にばらつきが出ないよう、玄関・水回り・外形の3点を、どの候補にも同じ順番で当てはめることが実務上の要点です。1件だけ丁寧に見て他は簡単に済ませると、比較の軸がそろわなくなります。内見のたびに同じ手順を繰り返すことで、候補どうしを公平に並べられます。
増築で外形が変わっていれば欠けの位置も当初とは違ってきますし、リフォームで水回りが動いていれば設計時に意識された配置も意味を持たなくなります。中古住宅では、設計時の図面よりも、いまの現況を基準に見立てる姿勢が実務的です。増改築の有無は仲介の担当者に確認しておくとよいとされます。
中古か新築かという取得の経緯そのものを、吉凶の理由とする記述は、ここで示す典拠には見当たりません。古典が注意を促してきたのは、玄関や水回りがどの方位にあり、どう保たれているかという点です。中古住宅を選ぶ際は、取得の経緯よりも、いまの間取りそのものを確認する方が実務的だとされます。判断に迷う場合は家相が良くないと言われたときもあわせてご覧ください。