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住まいの形態別

新築の間取りを決めるときの家相

図面考

これから建てる家は、唯一、間取りをまだ動かせる立場にあります。設計の早い段階でしか変えられないものと、あとからでも変えられるものを分けて整理します。

この頁の話

新築の間取りを決める場面は、家相のなかで唯一、建物そのものをまだ動かせる立場にあります。中古住宅を選ぶときは既存の建物から選ぶしかありませんが、新築ではこれから配置を決めていくため、家相の記述を設計に反映させる余地が残っています。既存の建物を選ぶ場面の考え方は中古住宅を買うときの家相で別に扱っています。

とはいえ、間取りのすべてが同じように動かせるわけではありません。玄関の位置や水回りの配置、建物全体の外形は、基礎工事より前の設計段階で固まり、着工後はほぼ動かせなくなります。内装の仕上げや収納の配置、家具の置き方など、設計が固まったあとでも調整できる部分とは、変えられる時期が大きく異なります。

新築の家相は、この「いつまでなら動かせるか」という時間軸を意識して進める作業だといえます。設計の初期段階、まだ間取りが確定していない打ち合わせのうちに、玄関・水回り・外形について希望を伝えられるかどうかが、新築ならではの分かれ目になります。この時期を過ぎてから希望を伝えても、間取り全体の見直しが必要になり、反映が難しくなります。

なぜそう言われるのか

家相書がもともと指南の対象としていたのは、まさにこれから家を建てようとする施主でした。江戸期の家相書が大工の手引きとして流布したとされるのも、普請の計画段階で参照されることが前提だったからです。

『陰陽道旧記抄』
竈、門、井、厠、者家神也

当時の家づくりでは、施主と大工が土地を定め、間取りを相談しながら決めていく過程そのものに、家相の考え方が組み込まれていたと考えられています。鬼門や水回りの位置を避けるという発想は、図面を引く前の段階、敷地に対してどう建物を配置するかを決める時点で検討されるものでした。方位を測り、敷地に対して建物をどう据えるかという最初の判断が、のちの間取り全体を左右したと考えられています。

現代の新築でも、この構図は変わりません。設計者や工務店との打ち合わせのなかで、玄関や水回りの位置、建物の外形について希望を伝える機会があるかどうかが、家相を反映できるかどうかを左右します。着工後に配置を変えることは、コストと工期の両面で現実的ではなくなります。

家相書の記述が「これから建てる家」を前提に積み重ねられてきたことを踏まえると、新築の間取り決定は、古典が想定していた場面にもっとも近い状況だといえます。中古住宅の見立てが「すでにある配置を確認し直す」作業であるのに対し、新築は「配置そのものを決める」作業である点が異なります。この違いは、家相をどの段階でどう活かせるかという実務上の判断にも直結します。

どう見るか

新築で家相を意識する場合、まず動かせるものと動かせないものを分けて考えます。

基礎工事より前、設計図が固まる前の段階でしか動かせないのは、建物全体の配置、玄関の位置、水回り(浴室・トイレ・キッチン)の位置、そして建物の外形です。これらは構造や配管、基礎の形とかかわるため、着工後の変更は大掛かりな工事を伴います。

一方、内装の仕上げ、収納の配置、家具の置き方などは、竣工後でも比較的容易に調整できます。家相書が説く対処のなかにも、掃除や換気の習慣のように、建物を変えずにできる範囲のものが含まれています。動かせる範囲と動かせない範囲を最初に切り分けておくと、打ち合わせで何を優先すべきかが見えやすくなります。

設計の打ち合わせでは、方位付きの敷地図をもとに、玄関・水回り・外形の希望を早い段階で伝えることが実務上の要点です。プラン提案の初回から方位を意識した希望を伝えておけば、後の変更が最小限で済みます。逆に、内装の打ち合わせの段階になってから配置の変更を求めると、間取り全体の見直しが必要になることがあります。

現代の住まいでの読み替え

現代の新築では、家相の希望と、採光・動線・耐震・省エネといった設計上の他の条件との両立が課題になります。

たとえば南面に大きな窓を配置したい要望と、玄関を鬼門・裏鬼門に置かないという希望が、敷地の形や道路の位置によっては両立しにくいことがあります。設計者は構造計算や建築基準法上の制約もあわせて検討するため、家相の希望だけを単独で通せるとは限りません。

工務店や設計者に希望を伝えるときは、「鬼門を避けてほしい」という抽象的な要望よりも、「玄関を北東・南西以外に置きたい」「浴室とトイレを鬼門・裏鬼門から外したい」というように、具体的な方位で伝えるほうが図面に反映されやすいとされます。優先順位もあわせて伝えておくと、他の条件と競合したときの判断がしやすくなります。

近年は、断熱・気密の性能が住宅全体で底上げされているため、方位による体感差そのものが小さくなっている面もあります。家相の希望を伝えつつ、性能面での説明も設計者から受けておくと、判断の材料が増えます。

お手元の間取り図では、どうでしょうか

玄関の方角と、水回り・建物の外形をあわせて拝見します

間取りの写真1枚で分かります

よくある誤解

新築の家相について、いくつか誤解が見られます。

まず、家相を意識すると間取りの自由度が大きく失われるという誤解です。実際に固定的な制約となるのは玄関・水回り・外形の位置に限られ、それ以外の部屋の配置や内装の仕上げには影響しません。

次に、着工後でも工務店に頼めば配置を変えられるという誤解です。基礎の形や配管の位置が決まったあとの変更は大掛かりな手戻りになり、費用と工期の両面で現実的ではなくなります。

また、設計者や工務店がすべての物件で家相を考慮して設計しているという誤解もあります。家相を反映するかどうかは施主から希望を伝えるかどうかにかかっており、伝えなければ考慮されないまま設計が進むことがほとんどです。希望を伝える時期を逃さないことが、新築ならではの実務上の要点になります。

マドラバの見立てではどこまで分かるか

無料の見立てが見ている範囲

マドラバの無料の見立ては、玄関と水回りが鬼門・裏鬼門にあたるか、建物の外形に欠けがあるか、の3点を拝見しています。設計段階のプラン図をもとに、着工前であれば同じ3点を確認でき、案を差し替えながら試すこともできます。設計者への具体的な伝え方や、他の設計条件との両立の詳細は、完全版レポートで扱う範囲になります。

完全版レポートで扱うこと

  • プラン案を差し替えながら、玄関・水回り・外形の判定を並べて試せます
  • 採光や動線など他の設計条件と両立させる考え方を扱います
  • 設計者・工務店への希望の伝え方を具体例つきで示します
  • 着工後でも対処できる範囲と、できない範囲を切り分けて示します

準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。

典拠



鎌倉期『陰陽道旧記抄』の「竈、門、井、厠、者家神也」および江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』『家相大全』ほか)に見られる、門戸を鬼門・裏鬼門に忌む説

家相の「三所三備」(三所=鬼門・裏鬼門・宅の中心/三備=竈・厠・井戸)に三備を掛けないとする説。江戸期の家相書群(松浦琴鶴『家相一覧』天保四年 ほか)に見られる

江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』ほか)に見られる建物外形の「張り・欠け」論

文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。

よくあるご質問

間取りのどこまでを家相の希望として伝えればよいですか

構造や配管とかかわる玄関の位置、水回りの位置、建物の外形は、設計の早い段階で伝える必要があります。内装の仕上げや収納の配置は、後からでも調整しやすい部分です。まずはこの3点にしぼって、方位付きの敷地図をもとに希望を伝えると、図面に反映されやすくなります。

家相の希望と採光や動線が両立しないときはどうすればよいですか

敷地の形や道路の位置によっては、すべての希望を同時に満たせないことがあります。設計者は構造や建築基準法上の制約もあわせて検討するため、優先順位をあらかじめ決めておくと相談が進めやすくなります。玄関・水回り・外形のうち、どれをもっとも重く見るかを先に整理しておくとよいとされます。

工務店にはどう伝えれば希望が通りやすいですか

「鬼門を避けたい」という抽象的な言い方よりも、「玄関を北東・南西以外にしたい」のように、方位を具体的に示して伝えるほうが図面に反映されやすいとされます。設計の初回打ち合わせから伝えておくと、プランの見直しが少なく済みます。口頭だけでなく、図面にメモを添えて伝えると認識のずれが起きにくいとされます。

着工が始まってから配置を見直すことはできますか

基礎の形や配管の位置が確定したあとの変更は、大掛かりな手戻りになります。着工後にできる対処は、内装や家具の配置、掃除・換気の習慣といった範囲にとどまります。配置そのものに関わる希望は、設計段階のうちに伝えておく必要があります。工程が進むほど、変更にかかる費用と時間は大きくなる傾向があります。

案内役のイラスト

広げる。合わせる。照らす。

間取り図を広げ、方位を合わせ、古典に照らす。
あなたの一枚を、順に拝見します。

登録不要・所要 約1分

間取りの写真1枚で分かります