家相の基礎
家相で建物の外形を見るときに使われる、張りと欠けという二つの言葉があります。長方形からの出っ張りと凹みを指す、対になる考え方です。
一
張りと欠けは、家相で建物の外形を見るときに使われる、対になる言葉です。建物の平面をおおよその長方形として捉え、そこから外側にはみ出した部分を張り、内側に凹んだ部分を欠けと呼びます。
たとえば、長方形の建物の一角に出窓や玄関ポーチが飛び出していれば張り、逆に一角がへこんで長方形が欠けたような形になっていれば欠けにあたります。どちらも、建物の外形が単純な長方形からどうずれているかを表す言葉です。
家相では、張りと欠けそれぞれに異なる見方が示されてきました。張りは比較的好意的に語られることが多い一方、欠けは注意を要する場所として扱われることが多いとされます。ただし、この幅にも条件があり、単純に「張りは良い、欠けは悪い」と言い切れるものではありません。
張りと欠けがどの方位にあたるかによっても、意味合いは変わるとされます。方位の割り出しには、家の中心(宅心)の取り方で扱った家の中心(宅心)が基準になります。宅心が定まらなければ、張りや欠けがどの方位に属するかも定まりません。
二
江戸期の家相書には、建物外形の張り・欠け論と呼べる記述が見られます。長方形を基本の形として捉え、そこからの出っ張りと凹みを、それぞれ別の意味を持つものとして扱う考え方です。
なぜ長方形が基準になるのかについて、家相書に明快な理由が一つだけ示されているわけではありません。ただ、方位を八区画に割って見るという家相の見方そのものが、整った形の建物であるほど区画を均等に割りやすい、という構造上の事情はあると考えられます。欠けや張りがあると、ある方位の区画だけが極端に狭くなったり、逆に本来ない方位にまではみ出したりします。
欠けについては、古典では、外形の凹みは方位によって意味合いが異なるとされます。鬼門・裏鬼門にあたる方位の欠けと、それ以外の方位の欠けとでは、扱われ方に差があるという記述が見られます。方位そのものについては八卦と方位で扱っています。
張りについては、欠けほど詳しい記述の蓄積があるわけではありませんが、建物が外に向かって広がる形として、欠けとは異なる評価がされてきたことがうかがえます。玄関の張りなど、方位によって好ましいとされる張りの記述も見られ、単純な出っ張りの大小だけでは語られていません。
張りと欠けを合わせて論じる記述の背景には、建物の外形をひとつの図形として捉え、そこから方位を割り出すという、家相の見方全体の前提があります。外形が単純な長方形であるほど、方位の割り出しが明快になるという事情も関わっていると考えられます。
三
実際の間取り図で張りと欠けを見分けるときは、まず建物の外形をなぞり、それをすっぽり囲むもっとも小さい長方形を思い描きます。その仮想の長方形からはみ出している部分が張り、長方形の内側に凹んで入り込んでいる部分が欠けです。
欠けと呼べる範囲については、辺の三分の一程度までとする説明が家相書には見られます。それより大きく凹んでいる場合は、欠けというよりも建物全体の形そのものが変わっている、という扱いになるとされます。
張りについても、出っ張りの大きさに一定の目安があるとする説明が見られます。小さな張り出しと、建物の半分近くを占めるような大きな張り出しとでは、同じ「張り」という言葉でも意味合いが変わってくるという考え方です。
どちらも、どの方位にその張りや欠けがあるかを合わせて見ることが前提になります。方位の割り出し方は家の中心(宅心)の取り方の内容が基準になります。一つの建物に張りと欠けの両方が存在することも珍しくなく、その場合はそれぞれを別々に確認していくことになります。
四
現代の住宅、とりわけ集合住宅では、出窓・バルコニー・玄関ポーチなど、外形からの出っ張りが多く見られます。これらを張りとして扱うかどうかは、建物本体との一体性によって判断が分かれるとされます。
L字型の敷地に建つ住宅や、狭小地で複雑な形になった建物では、欠けにあたる区画が生じやすくなります。設計上、駐車スペースや玄関アプローチを確保する都合で、建物の一角を凹ませる間取りは珍しくありません。
現代の建築基準や採光・通風の考え方からすると、欠けにあたる区画に窓を増やして採光を確保したり、風通しをよくしたりする工夫がしやすい、という説明のされ方もあります。張りにあたる部分は、収納や水回りをまとめる場所として活用されることが多いとも言われます。
設計の自由度が上がった現代の住宅では、あえて凹凸のある外形にして庭やテラスを取り込む間取りも増えています。こうした間取りでは、意匠上の意図で生まれた凹凸を、家相でいう張り・欠けとしてどう読むかが、あらためて確認される点になります。
五
張りと欠けについてよくある誤解の一つは、「張りは常に良く、大きければ大きいほど良い」という受け取り方です。古典では、張りは比較的好意的に語られることが多いとされますが、度が過ぎた張り出しについては、単純な吉としてではなく別の扱いがされてきたと考えられます。
もう一つの誤解は、欠けの大きさをまったく問わず、少しでも凹みがあれば一律に注意すべきだとする見方です。辺の三分の一程度までとする説明が示すように、欠けにも程度の幅があり、ごくわずかな凹みまで同じ強さで語られてきたわけではありません。
張りと欠けの言葉そのものを取り違える誤解も見られます。出っ張りを欠けと呼んだり、凹みを張りと呼んだりする記述をときおり見かけますが、家相書での使い分けは、外側に出るか内側に凹むかで決まります。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、建物外形の欠け(8方位いずれかの区画にあたる凹み)の有無を確認します。張り(出っ張り)については、無料・完全版レポートを問わず、現時点のマドラバの判定には含まれていません。また、欠けと判定する境目(辺のどの程度までを欠けと見なすか)の実務的な線引きも、無料の見立てでは明示していません。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』ほか)に見られる建物外形の「張り・欠け」論
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
家相では、張りは比較的好意的に語られることが多いとされますが、度が過ぎた張り出しは単純な吉としては扱われません。欠けは注意を要する場所とされることが多い一方、方位や大きさによって意味合いが変わるとされ、一律に良し悪しを決められるものではありません。
欠けと呼べる範囲については、辺の三分の一程度までとする説明が家相書には見られます。ごくわずかな凹みまで一律に欠けとして扱われてきたわけではなく、程度によって見方が変わるとされます。それより大きく凹んでいる場合は、建物の形そのものが変わっているという扱いになります。
建物本体との一体性によって判断が分かれるとされます。専有部分の外形としてバルコニーを含めるかどうかは、建物の構造や間取り図の描き方によっても変わるため、一律には言えない範囲です。共用部分にあたるかどうかも関わってきます。戸建ての出窓とは前提が異なる点です。
ここで示す典拠には、欠けを理由にリフォームを一律に勧める記述は見当たりません。古くは、欠けにあたる場所を物置にせず、手入れの届く明るい状態に保つことが対処として心がけられてきました。建物を変えずにできる対処が、まず語られてきた範囲です。増改築を伴う対処は別に検討されるものです。