家相の基礎
家相のあらゆる方位判断は、家の中心をどこに取るかから始まります。中心が定まらなければ、鬼門も裏鬼門も決まりません。その求め方を整理します。
一
宅心とは、家相で方位を割り出すときの基準になる、家の中心のことです。太極と呼ばれることもあります。読み方は「たくしん」です。
家相では、家の中心から見て北東にあたる区画を鬼門、南西にあたる区画を裏鬼門と呼びます。玄関や水回りが「北東にある」「南西にある」と言えるのも、どこかに中心を定め、そこを起点に方位を割り出しているからです。中心の位置が変われば、同じ玄関でも当てはまる方位が変わってしまいます。
つまり宅心は、鬼門・裏鬼門・張り・欠けといった、家相のほかのすべての見方の前提になる基準点です。中心が定まらないまま方位を語ることはできません。ほかの家相の記事がどれも「方位」から話を始められるのは、宅心という基準点がすでに定まっている前提があるからです。この記事で扱うのは、その基準点をどう求めるかという話です。
家相の「三所三備」という考え方でも、鬼門・裏鬼門とならんで宅の中心が「三所」の一つに数えられています。宅心それ自体が、家相で重んじられてきた場所であることがわかります。詳しくは三所三備とはで扱っています。
二
家相の「三所三備」では、鬼門(北東)・裏鬼門(南西)・宅の中心(太極・宅心)の三箇所(三所)に、竈・厠・井戸の三備を重ねないほうがよいとされてきました。江戸期の家相書群には、この三所三備の考え方が見られます。
なぜ中心が三所の一つに数えられてきたのかというと、中心は方位そのものの起点であり、家全体の中でもっとも動かしようのない一点だからだと考えられます。鬼門や裏鬼門は建物の形が変われば範囲も動きますが、中心はその動きを決める側の基準です。
もう一つの見方として、中心は家の中でもっとも人の出入りが集まりにくい場所でもあります。三備(竈・厠・井戸)のような火や水を扱う設備を、家のどの場所にも均等に配置できるとは限らない中で、家の芯にあたる場所には手を加えないでおく、という考え方が重ねられてきたと読むこともできます。三所三備の全体像は三所三備とはで扱っています。
中心をどこに取るかという具体的な作図の方法そのものについて、ここで示す典拠に細かな規定は見当たりません。江戸期の家相書は、あくまで三所三備という重ねてはいけない組み合わせを示すにとどまり、中心の求め方そのものを図解した記述までは、ここで示す典拠には見当たりません。次の節では、実務でよく用いられる考え方を紹介します。
三
宅心を求める実務上の考え方としては、建物の外形をひとつの図形とみなし、その重心を中心とする方法がよく用いられます。長方形に近い建物であれば、対角線の交点に近い位置が目安になります。
建物に張りや欠けがある場合は、単純な長方形とは重心の位置がずれます。張り(出っ張り)がある場合は、張り出した部分を含めた図形全体で重心を取る考え方が一般的です。欠け(凹み)がある場合は、欠けた部分を除いた実際の外形で重心を取ります。張りと欠けの扱いそのものは張りと欠けとはで扱っています。
二階建て・三階建てなど階数のある建物では、各階で外形が異なることも多くあります。この場合、1階の外形を基準にする考え方と、各階を重ねて共通する範囲を基準にする考え方の両方が示されることがあり、建物の形によって扱いが変わります。
L字型やコの字型など複雑な形の建物では、単純な重心の計算だけでは中心が定まりにくいこともあります。そうした形の建物での具体的な求め方は、間取り図ごとに個別の判断が必要になる範囲です。
四
現代の住宅、とりわけ集合住宅や狭小地の建物は、江戸期の家相書が想定していたような整った長方形の建物ばかりではありません。マンションの一住戸は隣接する住戸によって形が決まり、L字型やコの字型の敷地に建つ住宅も珍しくありません。
建物の形が複雑になるほど、中心をどこに取るかによって、玄関や水回りが「鬼門にあたるかどうか」の判定が変わりやすくなります。同じ間取りでも、中心の取り方一つで結論が変わることがある、というのが実務上の難しさです。
そのため、中心の位置は目分量ではなく、間取り図から外形を正確に起こしたうえで求めることが望ましいとされます。バルコニーや玄関ポーチなど、建物本体に含めるかどうかで判断が分かれる部分の扱いも、結果に影響します。
集合住宅の一住戸だけを見て中心を取るか、建物全体で中心を取るかによっても、見方が分かれます。戸建てのように敷地全体が一つの建物である場合とは前提が異なるため、マンションでの宅心の扱いは、戸建てとは別の考え方が必要になる場面です。
五
宅心についてよくある誤解の一つは、「部屋の中央」や「リビングの位置」を家の中心だと思ってしまうことです。宅心はあくまで建物の外形全体から求める重心であり、間取り上のどこか特定の部屋を指す言葉ではありません。
もう一つの誤解は、欠けのある建物では中心が求められない、というものです。欠けがあっても、実際の外形をもとに重心を取る考え方自体は成り立ちます。欠けの扱いを含めて中心を求める点が、単純な長方形の建物との違いです。
また、二世帯住宅や増築を重ねた家では、もとの建物と増築部分をどこまで一体として中心を取るかで見方が分かれます。増築の経緯によって扱いが変わりうる点は、単独の記事で断定できる範囲を超え、間取り図ごとに個別の判断が必要になります。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、間取り図から求めた家の中心を基準に八方位を割り出し、玄関や浴室・トイレ・キッチンが鬼門・裏鬼門にあたるか、建物外形に欠けがあるかを確認します。中心そのものはこの計算の基準点として使われていますが、中心の区画に何が配置されているか(水回りが重なっていないか等)の判定は、無料の見立てには含まれていません。中心と設備の重なりの読み方は、完全版レポートで扱う範囲になります。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
家相の「三所三備」(三所=鬼門・裏鬼門・宅の中心/三備=竈・厠・井戸)に三備を掛けないとする説。江戸期の家相書群(松浦琴鶴『家相一覧』天保四年 ほか)に見られる
江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』ほか)に見られる建物外形の「張り・欠け」論
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
いいえ、宅心は間取り上の特定の部屋ではなく、建物の外形全体から求める重心のことです。リビングがたまたま中心付近にあることはありますが、宅心そのものは部屋の配置とは別に、建物の形だけから決まります。太極と呼ばれることもある、家相のあらゆる方位判断の起点にあたる場所です。
住戸の外形をひとつの図形として扱えば、同じ考え方で重心を求めることができます。ただし専有部分の形が隣接住戸の形に左右されるため、戸建てよりも中心の位置が単純に決まらないことがあります。建物全体で取るか住戸単位で取るかでも、見方が分かれる部分です。
L字型やコの字型など複雑な形の建物では、単純な計算だけで中心が定まりにくいことがあります。張り・欠けの扱いを踏まえたうえで、間取り図ごとに個別に見ていく必要がある範囲です。目分量ではなく外形を正確に起こしたうえで求めることが望ましいとされます。
ここで示す典拠には、増築後の建物をどこまで一体として中心を取るべきかという明確な規定は見当たりません。増築の範囲や時期によって考え方が分かれるため、単独の記事で断定できる話ではなく、間取り図ごとの個別の判断が必要になる範囲とされます。二世帯住宅で棟を分けた場合も同様です。