部屋別の家相
玄関は家相で「門戸」として重んじられてきた場所です。方位以外の観点――明るさや風通し、たたきの広さなど――から、玄関の家相を整理します。
一
家相では、玄関は「門戸」として、住まいのなかでもとりわけ重んじられてきた場所だとされます。人の出入りする場所であり、外の気を家の中に取り込む入り口として位置づけられてきたとされます。家を建てる、あるいは選ぶときに、玄関の扱いから確認する人が多いのも、この重みづけを反映しているといえます。
家相書では、玄関の位置を方位とあわせて論じる記述が多く見られます。方位ごとの詳しい説明は方位別の記事(北東の玄関など)にゆずり、この記事では、方位以外の観点から玄関について丁寧に整理します。間取り図を見比べる際に、方位とあわせて確認しておきたい要点です。
具体的には、玄関まわりの明るさや風通し、たたきの広さ、玄関の正面に何を置くかといった論点です。いずれも、家相書のなかで玄関の吉凶とあわせて語られてきた要素だとされます。方位を確認したあと、あわせて見ておきたい観点として読んでいただければと思います。ひとつずつ順に整理していきます。
二
鎌倉期の『陰陽道旧記抄』には「竈、門、井、厠、者家神也」という記述が見られます。竈・門・井戸・厠と並んで「門」が名指しされていることから、玄関にあたる出入り口が、古くから住まいの要所として重んじられてきたことがうかがえます。
門戸が重んじられてきた理由のひとつに、人の出入りにともなって家の内外の空気や気配が入れ替わる場所である、という捉え方があったとされます。玄関を清潔に保ち、明るく風の通る状態にしておくことが、多くの家相書で共通して説かれてきたとされます。
たたき(玄関の土間)の広さについても、古くから語られてきた論点のひとつです。狭く暗いたたきよりも、ある程度の広さがあり、光と風が通るたたきのほうが好ましいとされる記述が見られます。当時の木造家屋では、たたきが狭く湿気がこもると、履物や建具が傷みやすかった事情もあったと考えられます。
玄関の正面に何を置くかについても、俗説として語られてきたものがあります。玄関を入ってすぐの正面に鏡を置くことや、正面に階段が見える配置を避けるといった話がその例です。これらは特定の書物の記述として断定できるものではなく、家相にまつわる言い伝えとして広く語られてきた話だとされます。玄関まわりの手入れとあわせて、あくまで参考として伝えられてきた範囲だといえます。
三
実際の間取り図を前にしたときは、次のような点を順に確認するとよいとされます。
まず、玄関の位置そのものと、周囲に窓や欄間があるかどうかです。玄関に自然光が入るか、扉を開けたときに風が通り抜けるかは、明るさと風通しを重んじてきた家相の考え方に沿った見方だといえます。窓のない玄関であれば、照明や換気の計画で補えているかも確認しておくとよいとされます。
次に、たたきの広さです。玄関ドアから框(かまち)までの奥行きや幅がどの程度あるかを見ます。狭いたたきでは、履物や荷物が置きっぱなしになりやすく、風通しも悪くなりやすいとされます。収納の有無もあわせて見ておくと、実際に整えやすいかどうかの見通しが立ちます。
さらに、玄関を入って正面に何があるかを確認します。正面に鏡や階段、トイレの扉が見える配置かどうかは、俗説として語られることの多い論点です。方位の吉凶とは別の観点として、間取り図の上で確認しておく価値があるとされます。図面だけで分からない場合は、実際に玄関に立って見え方を確かめる方法もあります。
四
現代の住宅では、玄関まわりの設備も当時とは大きく変わっています。シューズクロークを併設して収納量を増やしたり、玄関ドアの断熱・気密性能を高めたりすることが一般的になってきました。
古典が説いてきた「明るく風の通る状態を保つ」という考え方は、照明計画や換気計画に置き換えて読むことができるとされます。玄関に窓がない間取りでは、照明を明るめに計画したり、換気口を設けたりすることで、同じ趣旨を満たそうとする工夫が見られます。
マンションなどの集合住宅では、専有部分の玄関のほかに、共用の玄関やエントランスがあります。家相で語られてきた玄関の考え方は、主に専有部分の玄関を指すとされますが、共用部分の明るさや管理状態も、住み心地に関わる要素として気にする人もいます。
宅配ボックスの設置や、玄関先の防犯性能の向上といった、現代特有の関心事も増えています。これらは家相の古典には出てこない論点ですが、玄関という場所を大切に考える姿勢そのものは、当時と変わらないとも言えます。
五
玄関の正面に鏡や階段さえなければ問題ない、という理解は、家相の考え方を狭く捉えすぎているとされます。方位や明るさ、風通しといった複数の観点があわせて語られてきたのであって、正面の配置だけがすべてではないとされます。
逆に、玄関の方位さえ良ければ、たたきの広さや明るさは気にしなくてよい、という理解も一面的だとされます。家相書では、方位とあわせて、玄関まわりの状態を保つことも重んじられてきたとされます。方位と手入れの状態は、どちらか一方だけを見て安心できるものではないといえます。
玄関の正面に鏡や階段を置く配置についての話は、特定の家相書の記述として確認できているものではなく、言い伝えとして語られてきた範囲にとどまります。断定的に避けるべきだと言い切れるものではないとされます。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、玄関が鬼門(北東)・裏鬼門(南西)にあたるかどうかを拝見しています。いっぽう、この記事で扱ったたたきの広さや明るさ・風通し、玄関正面に何があるかといった点は、無料の見立てには含まれていません。間取り図から方位以外の要素まで読み取って見立てるのは、完全版レポートで扱う範囲になります。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
鎌倉期『陰陽道旧記抄』の「竈、門、井、厠、者家神也」および江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』『家相大全』ほか)に見られる、門戸を鬼門・裏鬼門に忌む説
家相の通説で巽(南東)の玄関を吉とする説(江戸期の家相書群に見られる)。採光・通風の面からの説明が付されることが多い
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
特定の家相書の記述として確認できているものではなく、言い伝えとして語られてきた話にとどまります。方位や明るさ、風通しとあわせて語られてきた玄関の考え方の一部として、参考程度に捉えるとよいとされます。断定して避けるべきだとまでは言えないとされます。
古くは、たたきを広く明るく、風の通る状態に保つことが好ましいとされてきました。広さを変えられない場合でも、履物や荷物を置きっぱなしにせず、こまめに片づけて風を通すことが対処として語られてきたとされます。収納を見直すだけでも印象は変わってきます。
方位だけがすべてではないとされます。家相書では、方位とあわせて、明るさや風通し、たたきの広さといった玄関まわりの状態を保つことも重んじられてきました。方位が良くても、暗く湿気がこもった玄関は好ましくないとされ、両方を確認しておくことが勧められます。
家相で語られてきた玄関は、主に専有部分の玄関を指すとされます。共用のエントランスは、住まい全体の家相というより、建物や管理の状態として捉える人が多いとされます。専有部分の玄関の明るさや風通しを優先して確認するとよいとされ、共用部は補助的な要素と考えられます。