部屋別の家相
家相の「三備」の筆頭は竈、現代でいえばキッチンです。火と水の位置関係や換気など、方位以外の観点からキッチンの家相を整理します。
一
家相の「三備」――竈・厠・井戸――のうち、筆頭に挙げられるのが竈だとされます。火を扱う場所として、古くから住まいのなかでもとりわけ重んじられてきたとされます。水回りのなかでも特別に扱われてきた設備だといえます。
現代の住まいでいえば、竈にあたるのはキッチン(台所)です。三備は、家の中心や鬼門・裏鬼門といった「三所」に重ねないほうがよいとされる設備の代表として、家相書にたびたび登場します。住まいを選ぶ、あるいは建てるときに、キッチンの位置から確認する人が多いのも、この重みづけを反映していると考えられます。
この記事では、キッチンがなぜ重んじられてきたのか、その由来と、火と水が近づく配置、換気、油や水気の始末といった、方位以外の観点から整理します。方位ごとの詳しい説明は方位別の記事(北東の玄関など、水回りの鬼門・裏鬼門を扱う記事群)にゆずります。間取り図でキッチンの位置を確認する際に、あわせて見ておきたい観点として読んでいただければと思います。
二
『陰陽道旧記抄』(鎌倉期)に見られる「竈、門、井、厠、者家神也」という一節では、真っ先に竈の字が挙げられています。火を扱う場所が、住まいの要所のなかでもとりわけ重く見られてきたことがうかがえます。
江戸期の家相書群には、家相の「三所三備」という考え方が見られます。三所は鬼門・裏鬼門・宅の中心、三備は竈・厠・井戸とされ、この三所に三備を重ねないほうがよいとする説が、松浦琴鶴の『家相一覧』(天保四年)ほかに見られます。三備の筆頭に挙げられるのが竈であることは、火を扱う設備がもっとも重んじられてきたことの表れだと考えられます。
竈が重んじられてきた背景には、当時の住環境の事情も重なっていたと考えられます。木造の家屋では、火の始末を誤れば火事につながりかねず、竈の位置や扱いには細心の注意が払われてきたとされます。また、竈は毎日の煮炊きに使う場所であり、家の暮らしそのものを支える設備でもありました。
水を扱う井戸や厠と、火を扱う竈が、あわせて三備として語られてきたことにも意味があるとされます。火と水は性質の異なるものであり、家相では、これらを鬼門・裏鬼門・宅の中心という特に注意すべき場所に重ねないことが、住まい全体の調和を保つ考え方として説かれてきたとされます。
三
実際の間取り図を前にしたときは、次のような点を確認するとよいとされます。
まず、キッチンが建物のどの区画にあたるかです。三所(鬼門・裏鬼門・宅の中心)に重なっていないかを、建物の中心から見て確認します。区画の境目に近い場合は、より慎重に見るとよいとされます。
次に、キッチン内部での火と水の位置関係です。コンロとシンクが近すぎたり、向かい合わせに配置されていたりする場合、火と水を近づけないという家相の考え方に照らすと、注意して見られてきた配置にあたるとされます。作業動線として近いことと、火水を近づけないという考え方は、必ずしも両立するとは限りません。
さらに、換気の状態です。窓や換気扇があり、調理中の煙や湿気を外へ逃がせるかどうかを確認します。油や水気の始末がしやすいよう、コンロまわりや排水まわりに手入れの行き届くスペースがあるかどうかも、あわせて見ておく点として語られてきたとされます。収納棚の配置なども、日々の片づけやすさに関わってくるとされます。
四
現代のキッチンは、江戸期の竈とは形も使い方も大きく変わっています。システムキッチンでは、コンロとシンクが同じワークトップの上に並んで配置されることが一般的で、火と水を近づけないという古典の考え方を、そのまま当てはめにくい面もあるとされます。
対面式やアイランド式のキッチンでは、リビングやダイニングと空間がひと続きになり、キッチンの存在感がこれまでよりも大きくなっています。三所に重ねないという考え方を踏まえるなら、対面式であっても、キッチン全体がどの区画にあたるかを確認しておく意味はあるとされます。
換気については、現代のレンジフードや24時間換気システムによって、当時よりもはるかに効率よく煙や湿気を排出できるようになりました。古典が説いてきた「火まわりの手入れを怠らない」という考え方は、フィルターの清掃や換気扇の点検といった、現代の日常的なメンテナンスに置き換えて読むことができるとされます。
油や水気の始末についても、現代では食洗機やディスポーザーといった設備で負担が軽くなっている面があります。それでも、コンロまわりに油汚れを残さない、シンクまわりに水滴を残さないという基本的な心がけは、古典の教えと重なるところがあるとされます。
五
対面式やアイランド式のキッチンは家相上よくない、と言い切る理解は、典拠に照らすと言い過ぎだとされます。江戸期の家相書は、当時の竈を前提に書かれたものであり、現代の対面式キッチンをそのまま想定した記述ではありません。
コンロとシンクが近い配置であれば必ず凶になる、という理解も一様には言えないとされます。火と水を近づけないという考え方は伝わっていますが、換気や手入れの状態とあわせて総合的に語られてきた話であり、配置だけで断定できるものではないとされます。
キッチンの方位さえ避ければ、火水の位置関係や換気は気にしなくてよい、という理解も一面的だとされます。方位と、キッチン内部の配置や手入れの状態は、どちらも家相書のなかであわせて語られてきた要素だとされます。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、キッチンが鬼門(北東)・裏鬼門(南西)にあたるかどうかを拝見しています。いっぽう、この記事で扱ったコンロとシンクの位置関係、換気の状態、対面式かどうかといった、キッチン内部の配置は、無料の見立てには含まれていません。間取り図からそこまで読み取って見立てるのは、完全版レポートで扱う範囲になります。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
鎌倉期『陰陽道旧記抄』の「竈、門、井、厠、者家神也」および江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』『家相大全』ほか)に見られる、門戸を鬼門・裏鬼門に忌む説
家相の「三所三備」(三所=鬼門・裏鬼門・宅の中心/三備=竈・厠・井戸)に三備を掛けないとする説。江戸期の家相書群(松浦琴鶴『家相一覧』天保4年 ほか)に見られる
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
火と水を近づけないという考え方は家相書に見られますが、配置だけで断定できる話ではないとされます。換気の状態や、油・水気の始末を怠らないこととあわせて、総合的に語られてきた考え方だとされます。現代のシステムキッチンでは近接が一般的である点も踏まえて読むとよいとされます。
江戸期の家相書は当時の竈を前提に書かれたものであり、現代の対面式キッチンを想定した記述ではないとされます。対面式だから一律によくない、と言い切れる典拠は見当たりません。キッチン全体がどの区画にあたるかを確認するほうが実情に近いとされます。形式そのものより配置と手入れを見るとよいとされます。
三備の筆頭である竈は、火を扱う場所として重んじられてきました。煙や湿気がこもらないよう換気を保つことは、古典が説いてきた手入れの考え方の延長として読み替えられるとされます。レンジフードの清掃も、この延長にある日々の心がけといえるとされます。
古くは、火まわりを使ったあとに片づけ、油や水気を残さないことが心がけられてきました。具体的にどこまで対処すべきかは、キッチンの形式や他の水回りとの位置関係によっても変わってくるとされ、一律の答えがあるわけではないとされます。まずは日々の手入れから始めるとよいとされます。