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部屋別の家相

トイレの家相

厠考

厠(かわや)は家相の「三備」に数えられ、竈・井戸とならんで宅の中心や鬼門に重ねないほうがよいとされてきた設備です。汲み取りだった時代の衛生事情から、水洗・換気が整った現代の住まいでの読み替えまで、典拠とあわせて見ていきます。

この頁の話

トイレは、家相で「三備」のひとつに数えられてきた設備です。三備とは竈(かまど)・厠(トイレ)・井戸の三つを指し、家の中でとりわけ注意して整えるべき三所——鬼門・裏鬼門・宅の中心——に、これらを重ねないほうがよいとされてきました。

鎌倉期の文献とされる『陰陽道旧記抄』には「竈、門、井、厠、者家神也」という記述が見られ、厠は門・井戸・竈と並んで、家の神が宿るとされた場所のひとつに数えられています。火や水を扱う設備、人の出入りする場所とともに、排せつという生理を扱う厠も、古くから特別に扱われてきたことがうかがえます。

今のトイレとは違い、かつての厠は水洗ではなく汲み取り式でした。この違いを踏まえずに古典の記述だけを読むと、現代の住まいに合わない判断をしてしまいます。

トイレという呼び方が定着したのは近代以降のことで、それ以前は厠のほかにも「後架(こうか)」「雪隠(せっちん)」といった呼び名が使われてきました。呼び名が変わっても、家の中で三備のひとつとして扱われてきた位置づけそのものは、地域や時代を通じて共通しています。次の項で、その背景を見ていきます。

なぜそう言われるのか

厠が三備として重んじられてきた背景には、汲み取り式だった時代の衛生事情が大きく関わっていたと考えられています。水洗設備のない当時、厠には常に臭気や虫がつきまとい、放っておけば不衛生な状態が家全体に及びかねませんでした。

『陰陽道旧記抄』
竈、門、井、厠、者家神也

鬼門・裏鬼門は日が差しにくく風も通りにくい方位とされ、そこに厠を重ねれば、汲み取り槽の臭気がこもりやすく、掃除の行き届きにくい場所になりやすかったと考えられます。宅の中心にあたる場所に厠を置けば、家のどこにいても臭いから逃れにくくなるという実際上の不都合もあったはずです。

つまり厠を三所に重ねない教えは、方位の吉凶というかたちを取りながら、汲み取り式の設備が抱えていた衛生上の弱点を、暮らしの知恵として名指ししていたという読み方ができます。江戸期の家相書群にも、この三備を三所に掛けないとする説が繰り返し記されており、当時の住まいづくりで広く踏まえられていた考え方だったとうかがえます。

厠が母屋から少し離れた位置に建てられていた時代もあり、これは臭気や虫を居室から遠ざける実際的な工夫だったと考えられます。母屋の中に厠を組み込むようになった以降も、方位を選び、風通しを確保するという意識は受け継がれてきたとされています。母屋との位置関係が近くなったぶん、方位と風通しへの配慮がいっそう求められるようになった、という読み方もできます。

どう見るか

間取り図でトイレの家相を見るときは、まず敷地の中心から見て、トイレがどの方位区画に入るかを確認します。北を上にした間取り図に、北東と南西を結ぶ線を引くと、トイレがこの線に近いかどうかが見て取れます。

次に、トイレが宅の中心——建物をおおむね九つの区画に分けたときの真ん中——に近いかどうかも、家相ではあわせて見られてきました。三所三備の説では、鬼門・裏鬼門とならんで宅の中心も、厠を重ねないほうがよいとされる場所のひとつだからです。

マンションであれば、専有部分だけを対象に同じ手順で確認します。ただし共用の配管ルートによってトイレの位置がほぼ決まっている住戸も多く、選びようのない配置であることも少なくありません。

戸建てで複数階にトイレがある場合は、階ごとに方位が異なることもあります。一階のトイレは敷地全体の中心から、二階のトイレは建物の輪郭から、それぞれ別々に方位を確認しておくと、見落としを避けやすくなります。増築でトイレを増設した住まいでは、増築部分の輪郭も含めて方位を測り直しておくと、当初の間取り図とのずれを防げます。

現代の住まいでの読み替え

汲み取り式が水洗に置き換わり、24時間換気システムが標準になった今の住まいでは、厠が抱えていた衛生上の弱点の多くが設備で解消されています。臭気は排水と換気扇によって処理され、汲み取り槽の管理という手間もなくなりました。

それでも意味が残るとすれば、清潔さと換気という所作の面です。便器のまわりを拭き掃除する習慣、使用後に換気扇を回し続ける習慣は、汲み取り式の時代に厠を清潔に保つよう説かれてきたことと、目的の点でつながっています。

最近の住宅では、トイレの窓を省いて換気扇だけで空気を入れ替える設計も増えています。窓がなくても換気の経路が確保されていれば、湿気や臭気がこもりにくいという点では、古典が求めた「風の通る状態」に近いと考えることもできます。

温水洗浄便座やタンクレストイレの普及によって、便器まわりの掃除の手間そのものも軽くなりました。設備が担う部分が増えたぶん、住む人に残された所作は、換気扇を止めずに使う、床や壁の水気を放置しないといった、ごく日常的な習慣に絞られてきているといえます。

お手元の間取り図では、どうでしょうか

玄関の方角と、水回り・建物の外形をあわせて拝見します

間取りの写真1枚で分かります

よくある誤解

「トイレが鬼門にあると必ず家に不幸が起きる」といった言い切りは、ここで示す典拠には見当たりません。家相書の記述は流派によって幅があり、方位そのものより、その場所がどう保たれているかを重く見る記述も見られます。

「今のトイレは水洗だから家相はもう関係ない」という受け止め方も、行き過ぎた単純化です。設備が変わっても、清潔と換気という所作の意味づけそのものは、古典の記述と地続きだと読むことができます。

また、「宅の中心にあれば無条件に良くない」という理解も、家相の見方としては粗すぎます。中心に該当するかどうかは間取りの取り方によって細かく変わり、そこまでの見立ては完全版レポートの範囲になります。

「厠という古い呼び名を使う記事だから今のトイレとは別物」という受け止め方も誤解です。呼び名が変わっても、水を使い臭気が出やすい場所として、家相で見られてきた対象そのものは同じだと考えられます。

マドラバの見立てではどこまで分かるか

無料の見立てが見ている範囲

マドラバの無料の見立ては、トイレが鬼門(北東)・裏鬼門(南西)にあたるかどうかを拝見しています。ここは無料でも確認できる範囲です。一方で、トイレが宅の中心にあたるかどうかの判定は、間取り図から中心の位置を割り出す作業を伴うため、完全版レポートで扱う範囲になっています。無料の結果に中心の判定は含まれていないとご理解のうえご覧ください。

完全版レポートで扱うこと

  • トイレが宅の中心に該当するかどうかを、間取り図から割り出して示します
  • 「辺の何割までを重なりと見るか」といった線引きの実務的な目安
  • トイレと浴室・キッチンなど他の水回りが重なる場合の読み方
  • 建物外形の欠けとトイレの位置が重なる場合の見方を詳しく示します

準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。

典拠



鎌倉期『陰陽道旧記抄』の「竈、門、井、厠、者家神也」および江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』『家相大全』ほか)に見られる、門戸を鬼門・裏鬼門に忌む説。

家相の「三所三備」(三所=鬼門・裏鬼門・宅の中心/三備=竈・厠・井戸)に三備を掛けないとする説。江戸期の家相書群(松浦琴鶴『家相一覧』天保四年 ほか)に見られます。

文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。

よくあるご質問

トイレが鬼門・裏鬼門にあると、必ず良くないのでしょうか

家相書の記述は流派によって幅があり、一律に断じられるものではありません。古典では、三備のひとつとして三所に重ねないほうがよいとされてきましたが、方位そのものより、清潔と換気がどう保たれているかを重く見る記述も見られます。北東・南西にあたるかどうかは、マドラバの無料診断でも確認できます。

マンションでトイレの位置を選べません

共用の配管ルートで位置がほぼ決まる住戸も多く、選びようのない配置であることは珍しくありません。古典の記述は、位置を選べる戸建てを念頭に置いて書かれた面もあり、選べない配置にそのまま当てはめる必要はないという読み方もできます。清潔と換気を保つことは、選べる・選べないに関わらずできる対処です。

宅の中心にトイレがあるかどうかは、どこで分かりますか

無料の見立てでは、宅の中心に該当するかどうかまでは扱っていません。建物の外形から中心の位置を割り出す作業が必要になるため、これは完全版レポートで扱う範囲になっています。まずは北東・南西にあたるかどうかを、無料の見立てで確認できます。宅の中心の判定は間取りの取り方によって細かく変わるため、実際の図面を見ながら割り出す必要があります。

汲み取り式ではない今のトイレでも、家相は気にするべきですか

水洗と換気設備によって、厠が抱えていた衛生上の弱点の多くは解消されているとされます。そのうえで、清潔と換気という所作の面では、古典の記述といまも地続きだという読み方ができます。どこまで気にするかは、住まいごとの考え方に委ねられる部分です。設備に頼りきらず、日々の掃除と換気の習慣を続けることも、古くから説かれてきた対処のひとつだといえます。

案内役のイラスト

広げる。合わせる。照らす。

間取り図を広げ、方位を合わせ、古典に照らす。
あなたの一枚を、順に拝見します。

登録不要・所要 約1分

間取りの写真1枚で分かります