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北西の玄関

門戸考

古典で重んじられてきた方位です。その位置づけと、現代の住まいでの読み替えまでを見ていきます。

北東 南東 南西 西 北西 鬼門 裏鬼門

古典ではこう言われます

北西は、易の八卦では乾(けん)にあたる方位です。乾は天や父、主人を象徴する卦とされ、八卦のなかでも重んじられる位置に置かれてきました。後天定位盤において、乾は八つの卦の並びの起点のようにも扱われる方位です。時計でいえば10時から11時の方向にあたり、方位盤のなかでも重要な位置を占めています。

鬼門・裏鬼門にあたる北東・南西と、日当たりのよさから好まれてきた南東・南——家相の古典が特に重い意味づけを与えてきたのはこの四方位で、乾にあたる北西の玄関そのものは、これらと同じ形では論じられてきませんでした。ただし乾という卦の位置づけから、北西は古くから軽んじられることのない方位として扱われてきた面があります。家の中でもとりわけ格式を意識される場所として語られることもあります。座敷や床の間を北西寄りに配置する住まいの考え方も、こうした位置づけと関連づけて語られることがあります。方位の並びのなかで、乾は一巡の締めくくりに位置する卦だともいわれています。

なぜそう言われるのか

乾が天や父、主人を象徴する卦として重んじられてきた背景には、八卦を方位に配置する考え方そのものの構造があります。後天定位盤では、それぞれの卦が家族の中での役割になぞらえて語られ、乾はその筆頭に位置づけられてきました。八卦の並びを一巡させたとき、乾がその起点にあたるという構造も、重んじられてきた理由のひとつとされています。

一方で、実際の住まいにとって北西という方位は、冬に冷たい季節風を受けやすい方位でもありました。日本の多くの地域で、北西からの風は冬場もっとも厳しい寒さを運んでくるとされ、木造家屋ではすきま風や底冷えの原因になりやすかったと考えられます。屋敷林や生垣を北西側に配して風を防ぐ工夫も、各地の住まいに見られてきました。屋敷の北西側にあえて建物を密に配置し、風の通り道を絞る工夫も、寒さ対策のひとつとして知られています。

重んじられる方位でありながら、実際には風雪にさらされやすい場所でもあった、という二つの側面が、北西という方位をめぐる記述には重なっていると読むことができます。象徴としての重みと、環境としての厳しさが同居しているのが、北西という方位の特徴だといえます。重んじられる場所だからこそ、寒さや風雪から守る手当てが欠かせなかった、という読み方もできます。

実際の間取りでよくある形

北西に玄関が来る間取りには、いくつかの典型的な形があります。北側の道路に接する敷地で、間口が西寄りにある場合や、角地で北側と西側の両方に道路が接する敷地では、玄関が北西に寄ることがあります。北向きの敷地は日当たりの面で敬遠されがちな一方、玄関の配置には比較的柔軟な自由度が生まれやすい面もあります。

上が北
上が北。濃紺の面が玄関のあるあたりです。方位は建物の中心から見て割り出します。

旗竿地で通路が北西側に抜ける敷地や、南面に居室をまとめた結果、玄関と水回りが北側にまとまる間取りでも、北西に玄関が来ることがあります。いずれも敷地条件から自然に導かれる配置であり、設計上の意図というより立地の結果であることが多いといえます。二世帯住宅で、玄関を分ける際に片方が北西寄りになるケースもあります。北向き接道の分譲地では、同じような玄関配置がまとまって並ぶこともあります。

現代の住まいでの読み替え

現代の住まいでも、北西という方位が抱える実際の条件は大きく変わっていません。冬場は北西からの季節風を正面から受けやすく、玄関まわりが冷え込みやすい方位です。とくに独立した住宅で周囲に風をさえぎる建物が少ない場合、体感の寒さはより強くなる傾向があります。

断熱・気密の水準が上がった現代の住宅でも、玄関の開閉のたびに冷たい外気が入り込みやすいことに変わりはありません。風除室や二重ドアの採用、玄関ドアの断熱性能を高めることが、寒さへの実際的な対処になります。乾の卦が象徴する「重んじられる場所」を、寒さで損なわないようにするという意味では、古典の姿勢と現代の対処は近いところにあります。植栽や外構で風の通り道を調整する工夫も、あわせて検討されることがあります。玄関ホールにタイルではなく断熱性のある床材を選ぶといった工夫も、寒さ対策として挙げられます。玄関に小さな暖房器具を置く家庭も見られ、来客時の印象づくりにもつながっています。寒さと向き合う工夫が積み重ねられてきた方位だといえます。

お手元の間取り図では、どうでしょうか

玄関の方角と、水回り・建物の外形をあわせて拝見します

間取りの写真1枚で分かります

同じ北西でも変わること

マドラバの無料診断で玄関の向きが指摘対象になるのは、鬼門・裏鬼門にあたる北東・南西の二方位に限られます。乾(北西)の玄関はこの対象に入りません。南東・南を好ましい向きとする判定も、無料診断ではなくAI完全版レポート(有料)で扱われる項目で、北西の玄関はいずれにも当てはまりません。北西の向きだけを理由に間取りを避ける必要があるわけではありません。

北西 鬼門 裏鬼門 宅の中心
上が北。家相で「三所」と呼ばれるのは、鬼門・裏鬼門・宅の中心の三つ。診断でも、間取り図をこの九つの区画に分けて見ています。

とはいえ、これは北西の玄関なら間取り全体に問題がないという意味ではありません。水回りが北東や南西に重なっていれば北東の玄関のように別の指摘が加わりますし、建物の外形に北西の欠けがあれば北西の欠けのように、方位ごとに意味合いが変わってきます。冬の季節風を受けやすい乾の玄関そのものより、水回りや欠けとの位置関係のほうが、実際には重視すべき点だといえます。

古くから採られてきた対処

古くは、北西という方位を軽んじることなく、冬の風雪から玄関まわりを守ることが心がけられてきました。すきま風を防ぎ、暖かさを保つ工夫も、あわせて大切にされてきたとされます。とくに冬の朝晩は冷気が入り込みやすいため、意識して隙間をふさぐ工夫が重ねられてきました。

自分の家で確かめておきたいのは、北西の向き単体ではなく、水回りの位置や外形の欠けとの組み合わせです。寒さへの対処とあわせて確認しておくとよいでしょう。

あなたの間取りで見るべき点は

玄関・水回り・建物の外形を、古典に照らして拝見します

間取りの写真1枚で分かります

典拠



易の八卦を方位に当てる考え方(後天定位盤)。北=坎、北東=艮、東=震、南東=巽、南=離、南西=坤、西=兌、北西=乾

江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』ほか)に見られる建物外形の「張り・欠け」論

文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。

よくあるご質問

北西の玄関は家相でよいとされているのですか。

乾は天・父・主人を象徴する卦として、八卦のなかでも重んじられてきました。ただし鬼門・裏鬼門のように吉凶を明確に論じる記述は、今回参照した典拠のなかには見当たらず、当サイトでは効果を断定していません。位置づけの重さと吉凶の判定は、別の話として考えるとよいでしょう。

マドラバの無料診断では北西の玄関もわかりますか。

無料診断で扱う玄関の向きは、鬼門・裏鬼門にあたる北東・南西だけです。南東・南を好ましい向きとする判定はAI完全版レポート(有料)の項目にあたり、北西の玄関はいずれにも含まれません。水回りの位置や建物の外形の欠けは無料診断でもあわせて確認できるため、方位だけで判断が完結するわけではありません。

冬の寒さ以外に気をつけることはありますか。

すきま風が入りやすい場所は、湿気や結露も残りやすくなります。玄関まわりの換気と断熱の両方を意識しておくことが、古くから心がけられてきました。冬場の対策は特に念入りに行うとよいでしょう。結露はカビの原因にもなるため、日頃から拭き取っておくと安心です。

すでに北西向きの玄関に住んでいます。できることはありますか。

風除室の設置や断熱ドアへの交換など、建物の骨格を変えずにできる対処があります。まずは冷たい外気が入り込む隙間をふさぐことが基本になり、防風のための植栽や外構工夫も選択肢のひとつです。冷気の入りやすい隙間から順に手当てするなど、優先順位をつけて進めるとよいでしょう。大きな費用をかけずに試せる対処から始めるのもひとつの方法です。

案内役のイラスト

広げる。合わせる。照らす。

間取り図を広げ、方位を合わせ、古典に照らす。
あなたの一枚を、順に拝見します。

登録不要・所要 約1分

間取りの写真1枚で分かります