家相の基礎
家相の「三所三備」という考え方は、鬼門・裏鬼門・家の中心という三箇所と、竈・厠・井戸という三つの設備を重ねないほうがよい、というものです。
一
三所三備とは、家相で語られてきた考え方の一つです。三所は、鬼門(北東)・裏鬼門(南西)・宅の中心(宅心)の三箇所を指します。三備は、竈(かまど)・厠(かわや)・井戸の三つの設備を指します。
この考え方では、三備にあたる設備を、三所にあたる場所に重ねないほうがよいとされてきました。鬼門に竈があってはいけない、宅の中心に厠があってはいけない、といった見方です。三箇所と三設備の組み合わせなので、確認すべき重なりは一つではありません。
三所三備は、江戸期の家相書群に見られる考え方です。三所と三備、それぞれの中身を正しく把握しておくことが、この記事の要点になります。鬼門・裏鬼門についての詳しい説明は鬼門とはで、宅の中心(宅心)については家の中心(宅心)の取り方で扱っています。
なお、三備には玄関(門戸)は含まれません。この点を取り違えている解説を見かけることがありますが、玄関の扱いは、三所三備とは別の考え方に基づいています。取り違えの経緯と、正しい対応関係は次の節でくわしく整理します。
二
三所三備の考え方は、江戸期の家相書群(松浦琴鶴『家相一覧』天保四年 ほか)に見られます。三所(鬼門・裏鬼門・宅の中心)に三備(竈・厠・井戸)を掛けないとする説として伝えられてきました。
ここでよくある取り違えについて、正確に整理しておきます。三備は竈・厠・井戸の三つであり、玄関(門)は三備には含まれません。三所三備という語感から「門・竈・厠」の三つを三備と思い込む例が見られますが、これは典拠に照らすと誤りです。
玄関(門戸)が鬼門・裏鬼門に忌まれてきたこと自体は事実ですが、その根拠は三所三備とは別のところにあります。鎌倉期の『陰陽道旧記抄』には「竈、門、井、厠、者家神也」という記述があり、竈・門・井戸・厠の四つを、家の神が宿る場所として並べて挙げています。江戸期の家相書は、この記述を踏まえて、門戸を鬼門・裏鬼門に忌む説を伝えてきました。
つまり、竈・井戸・厠の三つが「三備」として三所と結びつけられて語られる一方、門(玄関)は『陰陽道旧記抄』の記述と江戸期の鬼門論という、別の系統から鬼門・裏鬼門との関わりが語られてきた、という二つの流れがあります。玄関について詳しくは北東の玄関・南西の玄関で扱っています。
三
三所三備を実際に見るときは、まず家の中心(宅心)を基準に、鬼門(北東)・裏鬼門(南西)・宅の中心という三所の位置を確定させます。中心の求め方は家の中心(宅心)の取り方の内容が前提になります。
次に、三備にあたる竈・厠・井戸が、それぞれどの区画にあるかを確認します。竈は火を扱う場所、厠は排せつを扱う場所、井戸は水を汲む場所として、いずれも古い住まいで日常的に使われてきた設備です。三つとも、家の中で火や水を扱う設備であり、放置すると汚れや傷みが出やすい場所という共通点があります。
三所のいずれかに三備のいずれかが重なっている場合、その組み合わせが家相で注意を要する配置として語られてきました。三箇所と三設備の掛け合わせなので、確認すべき組み合わせは複数にわたります。
玄関については、三備には含まれないものの、鬼門・裏鬼門にあたるかどうかは別途確認されます。三所三備と玄関の鬼門論は、別の考え方として並行して見ていく必要があります。実際の間取り図では、この二つの見方を同時に当てはめて確認していくことになります。
四
現代の住まいでは、竈はキッチン(火まわり)、厠はトイレ、井戸は浴室や上水設備にあたるものとして読み替えられることが多いとされます。いずれも火や水を扱う設備という点で、古典が名指しした竈・厠・井戸と重なる性質を持ちます。
集合住宅では、水回りが一箇所にまとめて配置されることが多く、キッチン・トイレ・浴室が近接して同じ方位に集まりやすい間取りも見られます。三所三備の考え方に照らすと、この集約そのものが、複数の設備を同じ方位に重ねる配置として扱われることになります。
宅の中心にあたる区画に水回りが配置されるかどうかは、建物の形と間取りの取り方によって変わります。中心付近に廊下や収納をまとめ、水回りを外周に寄せる設計も、こうした考え方と関わりがあるとされます。
戸建てとマンションでは、水回りの配置の自由度そのものが異なります。戸建てでは設計段階で水回りの位置を選べますが、マンションでは配管の都合上、住戸ごとに水回りの位置がある程度固定されていることが多く、三所三備の考え方をそのまま設計に反映しづらい事情もあります。
五
三所三備についてもっともよくある誤解は、三備を「門・竈・厠」の三つだと思い込むことです。三備は竈・厠・井戸の三つであり、門(玄関)は含まれません。玄関の鬼門忌避は、三所三備とは別に、鎌倉期の『陰陽道旧記抄』と江戸期の家相書群の鬼門論から語られてきた考え方です。
もう一つの誤解は、三所三備を「三所のどこかに何かがあれば必ず問題」というふうに、設備の種類を問わずに一律で捉えてしまうことです。三所三備が指しているのは、あくまで竈・厠・井戸という三備との重なりであり、それ以外の部屋との組み合わせは、この考え方の対象には含まれません。
また、三所三備を家相のすべてだと捉えてしまう誤解もあります。張り・欠けや玄関の方位吉凶など、三所三備とは別の見方も家相には存在し、三所三備はそのうちの一つの考え方にすぎません。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、玄関と、浴室・トイレ・キッチン(三備にあたる竈・厠・井戸に相当する現代の水回り・火まわり)が、鬼門・裏鬼門にあたるかどうかを確認します。ただし、三所のもう一つである宅の中心に、これらの設備が重なっていないかどうかの判定は、無料の見立てには含まれていません。中心と設備の重なりについては、完全版レポートで扱う範囲になります。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
鎌倉期『陰陽道旧記抄』の「竈、門、井、厠、者家神也」および江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』『家相大全』ほか)に見られる、門戸を鬼門・裏鬼門に忌む説
家相の「三所三備」(三所=鬼門・裏鬼門・宅の中心/三備=竈・厠・井戸)に三備を掛けないとする説。江戸期の家相書群(松浦琴鶴『家相一覧』天保四年 ほか)に見られる
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
いいえ、三備は竈・厠・井戸の三つで、玄関(門)は含まれません。玄関の鬼門忌避は三所三備とは別に、鎌倉期の『陰陽道旧記抄』の記述と江戸期の家相書群の鬼門論から語られてきた考え方です。両者は別の系統として区別されます。混同した解説を見かけることもあるため、注意が必要です。
三所は、鬼門(北東)・裏鬼門(南西)・宅の中心(宅心)の三箇所を指します。三備(竈・厠・井戸)をこの三箇所に重ねないほうがよい、というのが三所三備の考え方です。宅の中心の求め方は家の中心(宅心)の取り方で扱っています。三所のうち鬼門・裏鬼門については鬼門とはで扱っています。
三所三備の考え方では、竈(キッチン)・厠(トイレ)のどちらも三備にあたるため、両方が鬼門(三所の一つ)に重なっている状態として扱われます。それぞれ単独の場合とは違う組み合わせの読み方が必要になる範囲です。玄関の位置もあわせて確認しておくとよいとされます。
井戸に相当する水回り(浴室)が、三所の一つである宅の中心に重なっている状態として扱われます。玄関や鬼門の水回りとは別に、宅の中心との重なりとして語られてきた組み合わせです。中心の位置は建物の外形から求め、建物の形によって位置が変わってきます。