家相との向き合い方
増築やリフォームで建物の外形や水回りの位置が変わるとき、家相の見立ても変わります。着手前に確認しておきたい点を整理します。
一
増築やリフォームは、間取りだけでなく建物の外形そのものを変える工事です。家相は建物の外形と各部屋の位置関係にもとづいて読むため、増築やリフォームのあとは、以前の見立てがそのまま当てはまらなくなります。
増築には、平屋部分に部屋を足す、2階を新たに設ける、下屋を張り出すなど、さまざまな形があります。リフォームでも、内装だけを変える工事から、水回りの位置を移す工事まで幅があり、家相の見立てにどれだけ影響するかは工事の内容によって変わります。
外形が変われば、張り・欠けの評価も変わります。増築で建物の一部が張り出せば、それまで欠けとして扱われていた区画が埋まることもあれば、逆に新たな凹みが生まれることもあります。家の中心(宅心)の位置も、外形の重心から求めるため、増築後には取り直しが必要になります。
水回りの移設をともなうリフォームでは、竈・厠にあたる設備がどの方位に移るかも、あわせて確認したい点です。この記事では、着工前の設計段階で見ておくと手戻りが少ない点を、家相の範囲に限って整理します。構造や耐震にかかわる話は扱いません。
二
家相が建物の外形や配置の変化に敏感な理由は、判定そのものが外形と中心の位置関係にもとづいているためです。張り・欠けは、建物の外形が正方形や長方形からどれだけ出っ張り、あるいは凹んでいるかで判断されます。増築によって外形の一部が変われば、この判断の前提そのものが変わることになります。
家の中心(宅心)についても同様です。家相では宅の中心を三所の一つとして重んじ、そこに設備を重ねないことがよいとされてきましたが、この中心は建物全体の重心から求められる点です。増築で建物の外形が広がれば、重心の位置も動くため、増築前に鬼門・裏鬼門でなかった場所が、増築後には鬼門・裏鬼門にあたる位置に変わることもあり得ます。
水回りの移設についても、三所三備の考え方に沿えば、竈・厠・井戸にあたる設備を三所に重ねないことが説かれてきました。リフォームで水回りの位置を変える場合、移設先が新しい中心や鬼門・裏鬼門と重ならないかを確認することが、この考え方に沿った見方になります。
増築・リフォームのたびに外形と中心を取り直す必要があるのは、こうした判定の性質によるものです。江戸期の家相書が増改築という個別の場面をどこまで詳しく扱っていたかは定かではありませんが、外形と中心にもとづく判定の仕組み自体は、新築か増改築かを問わず同じように当てはまると考えられます。
三
増築・リフォームを検討する段階で確認したいのは、まず増築後の外形を描いた図面です。既存部分と増築部分をあわせた外形で、張り・欠けがどう変わるかを確認します。下屋のように既存の屋根から低く張り出す増築では、外形に新たな張りが加わる一方、増築部分の形によっては別の方位に凹みが生まれることもあります。
次に、増築後の外形から家の中心(宅心)を取り直します。中心の位置が動けば、鬼門・裏鬼門にあたる区画も変わるため、玄関や水回りが増築前と同じ位置にあっても、見立ての結果が変わることがあります。
水回りを移設するリフォームでは、移設先の方位が新しい中心や鬼門・裏鬼門と重ならないかを確認します。増築案が複数ある場合は、案ごとに外形と中心を描き直して比較すると、違いが把握しやすくなります。
これらはいずれも、着工前の設計段階で図面上で確認できる内容であり、工事が始まってからでは変更が難しくなる点でもあります。図面が確定する前の段階で一度確認しておくと、あとから間取りを直す手間を抑えられます。
四
増築・リフォームは、家相の観点だけでなく、動線や採光、断熱といった現代の住まいの実利ともあわせて検討されることが一般的です。水回りを移設する場合、給排水の配管ルートや、既存の柱・梁との取り合いなど、家相以外に確認すべき点も多くあります。
家相の観点から着手前に見ておくと手戻りが少ないのは、外形と中心の取り直しです。設計段階でこの2点を確認しておけば、増築後に「思っていた見立てと違った」という状況を避けやすくなります。逆に、増築が完了してから外形や中心を確認すると、気になる点が見つかっても間取りを変更するコストが大きくなります。
複数の増築案を比較する段階で、家相の見方もあわせて確認しておけば、他の実利面の検討と同じ土台で判断材料にできます。
この記事では、家相の見方に絞って着手前の確認点を示しています。工事の構造上の可否や、耐震性にかかわる判断、費用の見積もりについては扱っていません。それらは建築士や施工会社に確認する範囲になります。
五
よくある誤解の一つが、増築すれば家相の見立ては一方的に悪くなる、という決めつけです。増築によって欠けが埋まり、外形の張りとして扱われる区画が増える場合もあり、変化が一律に良くない方向に働くとは限りません。
もう一つの誤解は、間取りの見た目を変えないリフォームなら家相は関係ない、というものです。水回りの移設や、下屋の増築のように外形が変わる工事では、見た目の変化以上に、外形と中心の取り直しが必要になります。
表面的な変更の大小ではなく、外形や設備の位置が動くかどうかで、見立てを取り直す必要があるかどうかが決まります。内装だけを変えるリフォームであれば、外形も中心も変わらないため、家相の見立てへの影響は限られると考えられます。逆に、見た目には小さな増築でも、外形の凹凸が変わる場合は取り直しの対象になります。
六
無料の見立てが見ている範囲
マドラバの無料の見立ては、玄関と水回りが鬼門・裏鬼門にあたるか、建物外形に欠けがあるかの3点を確認しています。増築後の外形図をアップロードすれば、増築後の欠けの有無を見立てることはできます。ただし、工事そのものの可否や、構造上の制約、費用については扱っていません。増築案の比較や水回りの移設先の検討は、完全版レポートで扱う範囲です。
七
準備中です。まずは無料の見立てからどうぞ。
八
江戸期の家相書(松浦東鶏『家相図解』ほか)に見られる建物外形の「張り・欠け」論
家相の「三所三備」(三所=鬼門・裏鬼門・宅の中心/三備=竈・厠・井戸)に三備を掛けないとする説。江戸期の家相書群(松浦琴鶴『家相一覧』天保四年 ほか)に見られる
易の八卦を方位に当てる考え方(後天定位盤)。北=坎、北東=艮、東=震、南東=巽、南=離、南西=坤、西=兌、北西=乾
文献名までは特定していますが、原文・頁の照合は行っていません。表記を「〜に見られる」に留めているのはそのためです。
九
増築によって外形の欠けが埋まる場合もあれば、新たな凹みが生まれる場合もあり、一律に悪くなるとは言い切れません。増築後の外形を図面で確認し、張り・欠けがどう変わるかを見ることが、判断の材料になります。増築案が複数あるなら、比較してから決めるのも一つの方法です。
水回りの移設先が、家の中心や鬼門・裏鬼門にあたる区画と重なっていないかを確認しておくと、三所三備の考え方に沿った見方ができます。間取りの見た目が大きく変わらなくても、設備の位置が動けば見立ては変わります。移設前に図面で確認しておくと安心です。
構造上の可否や耐震性については、この記事では扱っていません。建築士や施工会社に確認する範囲になります。ここで示しているのは、家相の観点から着手前に確認しておきたい点に限られます。両方の視点をあわせて検討することをおすすめします。家相の見方だけで工事の是非を判断しないようにしてください。
増築後の外形を描いた図面があると、欠けの有無や家の中心の位置を確認しやすくなります。設計段階でこの図面をもとに確認しておくと、工事が始まってからの変更に比べて手戻りが少なくなります。設計士に相談する前の材料としても使え、話し合いの土台にもなります。